- 「死刑について」 平野啓一郎(著) 岩波書店
- 内容
- 死刑の是否について考えさせられる一冊
- 死刑制度があるからといって凶悪犯罪の抑止力にはならない…
- 世界では死刑制度を廃止した国の方が多い
- まとめ
- こんな人にオススメ
こんにちは、ちわぷ〜です!
長い月日が経ち、恐らくススメた本人ですら忘れてるかと思うのですが、
いつもオススメ作品をご紹介してくださるニードル(id:kokoko777)様にオススメして頂いた書籍を1年半の時が経った今、超今更ながら読んでみましたので、ご紹介いたします☆
「死刑について」 平野啓一郎(著) 岩波書店
内容
「ある男」などで知られる、小説家の平野啓一郎先生が死刑についての考えを綴った一冊。
法学部出身だけあり、深く世界の流れと照らし合わせながら思考を深めてゆく。
死刑の是否について考えさせられる一冊
毎日色々な本を読めど、なかなかタイミングが合わずにオススメして頂いてから1年半も経ってしまいました(^◇^;)
「ある男」が映画化されたり話題作を手掛ける平野啓一郎先生が法学部出身だった事を初めて知り、言われてみれば「ある男」はその辺しっかりしてたな〜と思い返してみたり。
でも、それにしても売れっ子小説家がこんなにも扱いの難しい議題を掲げるとは。
それも小説の中でフィクションのキャラクターを通してメッセージを投げかけるやり方ではなく、個人の考えを語るとは…
覚悟をかなり感じる一冊なので読んでみることにしました。
今回の議題は、死刑制度について。
最近は京アニの事件の裁判などありましたが、これはなかなか議論が難しい事です。
本日はかなり真面目かつ、デリケートな内容の記事になりますので取り扱いに気をつけます。
小説ではないのでネタバレも何も無いのですが、簡単に語る事ができず、深く語らなければならない問題かと思いますので、巻末のデータを少し引用しつつ、いつもより少し長めに語らせて頂きます。
平野先生の詳細な意見としましては、それは本書を読んで頂いて知って頂くのが良いかと思いますので、そこは語らない様に進めてゆきます。
この制度に詳しい方、真剣に考えている方には突っ込みどころがもしかしたらあるかも知れませんが、あくまで書評ですので本の雰囲気がちょっとでも伝われば良いな〜という記事になりますので、
本書のコアな部分はネタバレ的になってしまいますので語りませんので、諸々ご理解頂けますと幸いですm(_ _)m
最後の方にチョロっと書いてますが、私個人の考えとしては本書を読んで深く考えた結果、死刑存置派、死刑撤廃派、現段階ではどちらとも言えなくなってしまいました…
なので、どちらかに肩入れした記事ではなく、ニュートラルな記事になる様に心掛けておりますm(_ _)m
最近はミステリー系を読む事が多く、そうなると必然的に殺人事件が起きますが、それはあくまでエンターテイメントの話。
実際に巻き込まれたら溜まったものではありません。しかし、少なからず巻き込まれている人がいるのも事実。
それを小説家が深掘りしていく、という構成自体がまず興味深かったです。
平野先生は以前は死刑賛成派だったのですが、死刑制度をなくした方が良いのでは?という考えに変わったそうで、両派の意見を噛み砕いており、とても分かりやすく、平野先生の考えも興味深かったです。
世界の流れはこう、と巻末の方に多めに分かりやすく資料が載っており、まるっきりこの制度についての知識が無い私でも分かりやすく、死刑制度を撤廃した国も多くある事も分かり、とても考えさせられました。
死刑制度があるからといって凶悪犯罪の抑止力にはならない…
一番衝撃的なのは、死刑制度があるからといって凶悪犯罪が減ったという事はないというデータがある事。
死刑制度は残すべき、という考えの方には驚きだと思います。
あまり凶悪な犯罪のニュースは見たく無いので避けがちだったので知らなかったのですが、死刑になりたいから犯罪を起こした、というケースも多々ある模様。
そもそも、悪い事をすると自分に返ってくるから、やめましょう。という事が通用しない人種がそういった凶悪な犯罪を起こしているので、死刑制度は犯罪の抑止力にはなり得ない。
巻末のデータを見ると、思っていたよりも遥かに多く、死刑が確定し刑の執行を待機している死刑囚がいる。
それだけの数の凶悪事件が起きているのなら、死刑が凶悪犯罪の抑止力になっていないというデータにも納得。
そうなると、一体死刑制度とは何の為にあるのか?
抑止力にならないのなら、その死に意味はあるのか?
そこの部分だけを深く考えると、死刑を廃止するべきという考えも理解できます。
時代小説マニアとして歴史を振り返ってみると、例えば身分制度があった江戸時代とか戦国時代に支配者の権威を示す為に見せしめ的に犯罪者を死刑にしたり、
(この時代はしっかりと権威を示しておかないと、一揆などの重大な反乱に繋がる懸念もあった様です)
「イノサン」で描かれているフランス革命前後のフランス独自の様々な器具、で派手に演出した処刑も、賛否は一旦置いておいて、当時の支配者達にとっては必要なものだったんだろうなと、意図は理解はできます。
でも、それは現代では通じない。
では、現代における死刑の必要性とは、一体なんなのでしょうか?
じゃあ死刑制度は撤廃していいのか?となると、
被害者遺族の気持ちを考えると、それはできない。
ニュースで裁判結果が報道され、死刑ではなく終身刑で確定、となれば私もきっとモヤモヤとした気持ちになってしまう事でしょう。
それを納得するのは難しい…終身刑って一生刑務所に入る刑ってわけでもないでしょうし。
そして、驚く事に巻末の2006年〜2021年のデータによると、死刑確定者の総数は毎年100人以上おり、2012年には133人…(刑執行は年0人〜15人)
それを見ると死刑制度を廃止してはいけない気がする。
両派の意見を深く考えれば考えるほど、自分がどっち派なのかどんどん分からなくなってゆく…
世界では死刑制度を廃止した国の方が多い
これは本当に意外な事でした。
日本国内の考えでは、死刑制度を残すべきという意見が圧倒的に多く、世界もそうなんだろうなと思っていましたが、実際は真逆でした。
しかし、2020年末の段階で世界では108ヵ国の国が死刑を撤廃しており、通常犯罪は死刑制度は無し、事実上廃止した国を含めるとさらに30カ国以上が含まれる。
一方で、死刑制度を存置している国は、日本を含めて55ヵ国…
世界の流れとしては死刑制度撤廃に傾いている様です。
どういった背景で決断したかはそれぞれの国によるかとは思いますが、もしかしたら日本もしっかりと考えなければならない日が来るのかも、いやもう来てるのかも知れませんね…
世界の流れ、平野先生の考えを知る事により、そういった事を深く考えるきっかけになる一冊でした。
まとめ
人気小説家の平野啓一郎先生が、避けて通りがちな死刑制度について切り込んだ一冊です。
色々と深く考えさせられる一冊でした。
恐らく自分で選んでいたら読む機会がなかった一冊だと思いますので、ご紹介してくださったニードル様に感謝です!
平野先生の作品は、以前ご紹介させて頂いたこちらの作品もオススメです!
こちらは小説になります☆
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こんな人にオススメ
死刑制度について思うところがある方
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